伯方雪日「Gカップ・フェイント」(あるいは『がまくら市事件』)

『がまくら市事件』創元推理文庫版2分冊、昨年暮れ刊行時に著者の1人伯方雪日氏からご恵贈賜り、同氏作品が入ってる『晴れた日は謎を追って』を読み終えたあと私情により中断のままにしてしまっていたのを今般『街角で謎が待っている』ようやく読了す。とともに『晴れた日…』収録の伯方氏作「Gカップ・フェイント」の関連短篇「メガネ・レイン」Kindle版もこの際購入し読む。

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ってことでこの『がまくら市事件』(旧『蝦蟇倉市事件』)、面白い! ミステリー方面ではこれだけの気鋭の揃い踏み自体凄いことだろうが、個人的には福井健太氏の解説にあるように、まず何よりシェアード・ワールドの楽しさ、つまりひいてはクトゥルー神話にも通じる共通世界観での多彩な試みのワクワク感だ(なんて言うとまた「クトゥルーはシェアードに非ず」とか五月蠅いご意見番方から文句が出るかもだが)。と同時にその世界観がある狭いコミュニティに限定されそこで色々起こるという箱庭的愉しみ。言わば『ひょっこりひょうたん島』や『チロリン村とくるみの木』(ってのは古すぎるか)的な俯瞰の快楽とでも言うのか。いや実際巻頭の絵地図ではひょうたん島思い出した、つい先日NHKで島の模型展示見たばかりでもあり。…というのは兎も角、総じては『晴れた日…』がミステリー的趣向重視『街角で…』はある種ホラー的刺激濃厚と、後者がより好みのほうかもしれない、越谷オサム「観客席からの眺め」秋月涼介「消えた左腕事件」のような悪趣味作といい北山猛邦「さくら炎上」の冷たい詩情といい…
…がやはり何と言っても『晴れた日…』所収の伯方雪日「Gカップ・フェイント」の人を食った大トリックが2巻通じて最高だ! 大坪砂男もまっつぁおの真相を目にしたときは思わず仰け反った。これはひょっとして、この作者の真摯な求道的長篇諸作にはなかなか見られない本気のバ〇ミス!? ──かどうかに拘らずこの遊び心の極致、マイケル・スレイドをきっかけに知り合ったただ1人の作家である伯方氏はオレの見込みどおりの流石な人だっ!とあらためて感嘆。しかも処女作以降標榜する格闘技本格ミステリーとしてガチの作りで、その方面への思い入れと蝦蟇倉市の設定とが見事に融合。贔屓目抜きにしても全参加作中随一の傑作と推せる。
関連作「メガネ・レイン」はその前日譚ながらどちらから読むも可、得意とする青春の苦さがこもる佳篇。これによってまたシリーズ化への可能性ができたのでは。
ということで実は伯方氏の他の電子版短篇作品もまとめて買って読んだ。「血縁」は『誰もわたしを倒せない』『死闘館』の城島刑事スピンオフ、「ほどよく縮れたぼくの夏」は甘酸っぱいラーメン・ミステリー(?)、「偶像」は個人的最好みのトリッキー・ホラーと、どれも期待以上の秀作揃い。自ら積極的に電子出版に参戦してる姿には啓発されること大。

伯方さんありがとうございました(今更っすが)!

 

  

  

メガネ・レイン 凪シリーズ

メガネ・レイン 凪シリーズ

 

  

血縁

血縁

 

  

偶像

偶像

 

  

ほどよく縮れたぼくの夏

ほどよく縮れたぼくの夏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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