末國善己編『永遠の夏 戦争小説集』『時代小説マストリード100』

 末國善己編『永遠の夏 戦争小説集』(実業之日本社文庫)を読む。

http://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-55214-9

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 伝奇 時代 歴史 怪奇幻想 推理…等エンタテインメントを軸にしたこれまでの末國氏編アンソロジー群とは些か趣を異にし、「先の大戦」といういまだ特別な重さ深刻さの伴うテーマで集められた傑作集。編者解説には【戦後七〇年の節目の年】【戦争を経験した世代が減り、戦争の記憶も薄れつつある】【このような時代だからこそ、立ち止まって先の大戦とは何かを考える必要がある】とあり、実際にあの時代を成人として経験しあるいは従軍した作家(坂口安吾「真珠」大岡昇平「歩哨の眼について」田村泰次郎「蝗」城山三郎「硫黄島に死す」山田風太郎「潜艦呂号99浮上せず」徳川無声「連鎖反応-ヒロシマ・ユモレスク-」島尾敏雄「出孤島記」)、未成年期に終戦を経た作家(皆川博子アンティゴネ五木寛之私刑の夏」小松左京「戦争はなかった」)、戦後生まれで未見の時代としての大戦期を書く作家(柴田哲孝「草原に咲く一輪の花-異聞 ノモンハン事件-」古処誠二「糊塗」帚木蓬生「抗命」目取真俊「伝令兵」)と各世代に亘っているのが好バランス。柴田 古処 目取真ら若い世代が(俊才による傑作揃いだから当然とは言え)そんな若さを感じさせないほどの深みからの視点を持ってるのには感心させられ、老人になりかけながらいまだあの時代を漠然としか考えられないわが身が恥ずかしくなる。集中とくに印象強烈なのは、噎せ返るような血と肉と性の混沌を抉る「蝗」、大惨劇をあまりに淡々と描写する「連鎖反応」、戦史の暗部に驚愕の謎解きで光を当てる「草原に咲く…」等で、中でも「連鎖…」の徳川は収録作家としては異色の撰だろう。個人的に子供の頃『私だけが知っている』の司会で朧ながら馴染みがあるのと相当昔短篇ユーモアミステリーをひとつだけ親父の持ってた読み物雑誌で読んだことがあったので妙な懐かしさがあるが、こういう作も書いてたのは驚き(出典書『徳川夢声の小説と漫談これ一冊で』を以前神田の古書店で見かけたが値が張ったので見合わせた)。その徳川は広島を書きながらもその地に縁が深いわけではないようだが、本書編者末國氏自身は広島県の出身、余人には測りえない感慨があるかもしれない。わが地元長岡も(広島とは比べられないが)悲惨な空襲に遭った地として毎年花火の季節になると鎮魂の気が街に漂う。本書解説にもある【机上の空論】によって粛々と何かの外堀が埋められつつあるように感じられてならない昨今、才ある作家たちの筆による五感の伴う戦争の真実に真摯に耳を傾けたいもの。

 

 …と言ってるうちに出たばかりの『読みだしたら止まらない! 時代小説マストリード100』(日経文芸文庫)もいただく。末國さんありがとうございました! 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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