『サイバーミステリ宣言!』

一田和樹 遊井かなめ 七瀬晶 藤田直哉 千澤のり子 共著『サイバーミステリ宣言!』(角川書店)を読む。

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縁あっていただいたこの本、迂闊にも最初書き下ろし小説集と勝手に予想してたが然に非ず、評論+対談+ブックガイドからなる入門書なのだった(帯にちゃんと書いてある)。が評論と言っても堅苦しいものじゃなく〈サイバーミステリ〉というジャンルの捉え方をオレのような情弱にも判り易く説き明かしてる。〈サイバーミステリ〉の定義とは「インターネット社会やソーシャルメディア社会で起こる事件や犯罪が解決される過程を描いた物語」としている(遊井かなめ)が、『宣言!』という書名からも窺われるようにこの本はどうやらある種の挑発で、これからのミステリはそういう「分野」の存在を敢えて意識して読み/書くほうがより面白くなると思うが如何に?と問いかけることに狙いがありそうだ。事実企画の中心人物とおぼしい作家 一田和樹は巻末で「カオスだな」と自己感想を洩らし「網羅的ではあるが体系的ではない手引き書」であるとして「サイバーミステリの世界は始まったばかり」「新しい世界を拓いてください」と読者&作家に呼びかけてる。がそこには希望だけでなくある種の危機意識も仄見え、「サイバー空間を舞台とするだけに多くの悩みを抱える困ったミステリ」(遊井かなめ)との吐露もある。その意味で作家 七瀬晶と評論家 藤田直哉との対談の中に、現実社会での情報入手や通信連絡が容易くなったせいで書き辛い面が出てきたのは事実だが、しかしそういう例は過去にも乗り越えられてきた(電話の出現のときさえ!)という趣旨の話があるのが面白い。たしかに電車ができれば鉄道ミステリが生まれテレビができれば2時間サスペンスが見られるようになった(違うか)歴史に学べば、今後も思いもかけない新たなものがきっと出てくるはずと思える。巻末のブックガイドでは小説だけでなく漫画や映画も採りあげられ、個人的には『相棒シリーズ X DAY』が入ってるのに注目! サイバー空間自体を舞台にするというよりそこに関わる「陰の社会構造が浮き彫りになっていく」(千澤のり子)映画としてサイバーミステリの1つの広義型と言える。
偶然ながらグレッグ・イーガンのあとに読んだだけに立て続けの仮想空間を巡る記述に頭がくらくらしてくるが(と言うのは大袈裟だが日頃滅多にないことゆえ)、当然ながら本書はミステリに軸足を置いてるのでSFについては敢えてあまり語られない。でも『ゼンデギ』や『順列都市』もサイバーミステリとして読むことは充分可能──と言うかむしろそう読みたい──なので次回のブックガイドに推薦したい(そんなこと言ったらSFにはそういうの多過ぎそうだからきりがなくなるかな?)。 

サイバーミステリ宣言!

サイバーミステリ宣言!

 

  

サイバーミステリ宣言! (角川書店単行本)

サイバーミステリ宣言! (角川書店単行本)

 

 ありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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