田村高廣 中尾彬 高沢順子『本陣殺人事件』

2/28(日)神保町シアター『本陣殺人事件』(1975ATG 高林陽一)

http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/program/yokomizo2_list.html#movie01

(※結末あり注意→) http://movie.walkerplus.com/mv18238/

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奇蹟的大傑作。

相当以前におそらくレンタルVHSで初見したのみでスクリーンで観るのは今回が初──「おそらく」と言うのは時期の記憶が酷く曖昧なためだが、少なくとも1975年の公開時には観たはずはなく、翌76年の東宝+角川版『犬神家の一族』を観た影響で近い過去の金田一物映画に本作があると知り視たくなった、と言う経緯と思われる。ただレンタルビデオと言うものが一般的になったのは80年代頃のようなので当然それ以降になり『犬神家』の影響でと言っても大分経ってからなのは否めないわけではあるが…

そんな事情は兎も角として、ビデオで視たときの記憶で強烈に残っていたのはまず何と言っても高沢順子(新発田出身)演じる鈴子の妖美だ。原作は既に読んでいたがその中での鈴子のイメージを遥かに超える存在感に瞠目。高沢は出演時20歳なので実年齢では少女とは呼び難いが純真と魔性をともに宿す眼光は所謂白痴美の極致で、個人的にはフェリーニ『悪魔の首飾り』の少女(マリーナ・ヤルー)と並ぶ。しかもその鈴子が弾く琴の旋律の凄絶さ! 音楽担当はメジャーデビュー前の大林宣彦だがあの琴の曲も大林作曲? 鈴子=高沢のインパクトは一般的にも強いようで映画チラシ(上の写真)やDVDジャケでも大きく使われてる。

またそれと並び──と言うより全般的にはそれ以上に──あまりにも鮮烈且つ重要なのが密室殺人トリックの映像再現だ。無残な鮮血の海と峻烈に対置される冷酷な仕掛けの脈動をここまで厳然と魅せた映画はそれ以前にはなかったのでは? 俳優陣もその嘗てない異形空間に見事に嵌まる。田村高廣 一世一代の激演。水原ゆう紀 ポルノ系で名を馳せる前の清冽美。加賀邦男(志賀勝の父!)の貫録、 東野孝彦(のちの英心)の鷹揚、東竜子(戦前からの名女優)の母性、新田章(この人のみ不詳)の繊細。そしてやはり中尾彬の持つ独特の雰囲気なしにはこの映画は成り立たない! 振り被らない朴訥な理知性と言いはにかみ気味に蓬髪を掻く仕草と言い明らかに石坂浩二(&古谷一行)版金田一耕助を先どりしてる。ジーンズ姿ながらジャケットは実は意外とお洒落なデザインで『金田一耕助映像読本』にあるような「ヒッピー風」とまでは行かないがそれまでの映像表現における「名探偵」のイメージを一新する画期性なのはたしか。それと同時に全篇を彩る日本的美景──雪 田園 竹林 水車 離れ 雨戸 障子 屏風 畳 刀… ──のスケール感ある効果は絶大で、金田一の造形とともに角川版シリーズの方向性に強く影響していないはずはない。実際今回再見して角川版で多用される風景挿入を思わせる美しい山林が映し出されるシーンがあるのを知りその思いを強くした。

冒頭とラストでピンクの衣装を着たキューピー?人形を持った中尾金田一のシークエンスが分割して流されるが、あの人形がそこ以外にも作中で2度出てくるのを確認。それがどこか、また金田一がなぜそれを持ち最後にどう使ったか、これから観る向きには是非注目してほしく…

 

本陣殺人事件 [DVD]

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余談だが後年中尾彬がバラエティ番組で石坂浩二をクサしてたことがあり(どういう言い方だったかは失念)金田一俳優同士ライバル意識か…などと思ったが石坂とは『本陣』の6年前の69年ドラマ『颱風とざくろ』で共演してるの視た。と言っても直接の絡みはなく石坂は主演の一角で中尾は端役、学生運動の闘士を演じ石坂兄役の緒形拳を批判するシーンがあったのを憶えてる。勿論その程度では因縁とは言えないが…

石坂+市川崑版金田一最終作は結局『犬神家』リメイクとなったが『本陣』案もあったそうなので実現していればまた1つ面白い比較の種になっただろうと惜しい気も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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