『怪樹の腕』続
『怪樹の腕』を読む。
初めは妹尾アキ夫訳が5篇も入ってるのに惹かれたんだが、読んでみると〈大関花子訳〉や〈大川清一郎訳〉や〈訳者不明〉などの大活躍?で妹尾も霞む。作品は解説でつっこめる作をわざと選んでる節があってにやりとさせたりとか、選択眼と読みの視点がとにかくユニーク。個人的には「寄生手」「白手の黒奴」「蟹人」「死人の唇」「アフリカの恐怖」「怪樹の腕」「成層圏の秘密」等怪奇幻想云々とか小説の出来なんてこと以上に〈パルプ臭〉のことさら横溢する作(全作そうではあるんだが)がとくに面白い──と思うのも編者の策に乗せられたってことかも。
あとなんといっても各篇の解説が場合によっては作品そのもの以上にケッサクだったり。こういう資料的価値の求められる文章ってとかく堅くなりがちだが、この編者はブログかツイッターに書くような砕けた物言いを随所に挟んでて(そればっかりじゃないところかがまたいい)クスクスさせられっぱなし。しかもただ砕けてるんじゃなくてちゃんとユーモアのセンス(というかネタ心)がある。妹尾には原作改変癖があったらしいというんで「今後妹尾訳研究には原作対比が不可欠」って、そんなしょもな研究に精出す物好きおらへんて!と思わず脳内でつっこんでしもたよ。
にしても思い出すのは国書刊行会版『ウィアード・テールズ』だ。あれ当時新刊で買ってたが2巻目だけ買いそびれてたらそのうち古本でも入手難になり、揃いで買うのも癪だから単品で出回るの待ってたら歯抜け補充にン十年もかかってしまったなんてことがあったっけ。復刊の盛んな国書さんもあれだけは未だみたいだが、そろそろどうかな?
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