『狩久全集』『四季桂子全集』

『狩久全集』+『四季桂子全集』全七巻ついに落手!

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豪華な造本とは伝わっていたが現物を見ると決して華美や重厚といった威圧的なことではなくむしろ所謂瀟洒とか端正等の形容が相応しいと判る。それは親しみ易さがあって手にとり易いということでありしかも狩久という作家のイメージにも合う。

↓ 付録のカバースペア3種。函装だが函から出すとさらにカバーがかけられている。原画は杉本一文作の銅版画とのことだが 杉本画は角川文庫横溝正史のイメージでしか知らなかったため一見『幻影城』表紙の山野辺進画を思わせて意外な感も。でもそこもまた狩久に合う。

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よく見ると装丁(大貫伸樹)がかなり凝っているのが素人目にも感じとれる。例えば函とカバーの絵が巻ごとにそれぞれ同じなのは当然としても 函とカバーとで絵の位置をわざと微妙にずらし且つ描かれいてる女性の顔を半端に途切れさせてあるため こうやって ↓ 少しずつ函から出していく途中で合わせ絵のように満面になる仕掛け。この繊細さを演出するセンスは佳。

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しかも外見だけでなく カバーをそっと剥がしてみると ↓ 文字に金箔があしらわれた本自体の背表紙と 味のある緑色の天鵞絨風の布装の表紙が現われる。

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とにかく全てが洒落ている。中を覗くと目次の文字が斜めになっていたり 作者のポートレートが第五巻『追放』の劈頭だけに入っていたり 第六巻『裸舞&裸婦於符眞&贋』の表題作だけタイトルページが直筆とおぼしい原稿用紙のコピーだったり 細かいところに工夫がある。本文の文字が比較的大きめで読みやすそうなのも好印象。だがそういった中味についてはここに写真を載せたりはせず やはり内容に属する部分に関してはこの全集を自分で買った人にだけ見る権利があるというものだろう。『四季桂子全集』には夫人の肖像写真が冒頭に載っており勿論初めて尊顔を拝したが──美人。麻耶子との関係性など興味は尽きない……がそれはまたの話。

実際に読むのはどの巻から──となると 正攻法としては第一巻『落石』から既読作も含め順に読んでいくべきではあるだろうが……やはり問題作『裸舞…』をまずはという衝動を抑えがたい。(※このタイトル正しくは〈於符〉だけ小文字で その読み方はここでは敢えて伏) だがそれにとりかかるには別の短篇某作を先に読んだほうがよさそうでもある(それも初出時に既読ではあるが)。そんな懊悩をも含全てが楽しみ。

作品の収集は勿論のこと関係者への協力要請や何より資金の調達に到るまで編纂者佐々木重喜氏の努力と苦労は並大抵のものではなかったと想像されるが それもこれも狩久への愛情に基づく熱意が原動力となっていただろうと思うと本当に頭が下がり もう迂闊に狩ファンだなどとは言えない。しかも出来上がりのこの素晴らしさをじかに目にすると佐々木氏の編纂者としてのただならない才能も感じさせられる。本格ミステリ作家クラブはこの偉業を到底無視できないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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