末國善己さんから編纂書『国枝史郎 伝奇風俗/怪奇小説集成』(3/30刊・作品社)をいただきました。
作品社版国枝復刻シリーズの最終巻となる模様。長編ダンス小説(!)『生(いのち)のタンゴ』や戯曲などこの作家の幅の広さを窺わせる構成だが、最注目はやはり米パルプ誌訳出集『恐怖街』。『怪樹の腕』の余韻と頭の隅で較べつつ読むのも興味深そう。税込7140円、限定千部。貴重なものをいつもありがとうございます。今日はとり急ぎ紹介のみ。

- 作者: 国枝史郎,G・T・フレミング・ロバーツ,サンダース・M・カミングス,エドモンド・ハミルトン,H・M・アッペル,アーサー・J・バークス,フランク・ベルクナップ・ロング,末國善己
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2013/03/30
- メディア: 単行本
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先週に引き続きラピュタ阿佐ヶ谷〈素晴らしき哉、SHOWBIZ人生!〉より『青春ア・ゴーゴー』(4/9)。
966年(S41)/日活/白黒/93分
■監督:森永健次郎/脚本:伊奈洸、千葉茂樹/撮影:山崎善弘/美術:大鶴泰弘/音楽:伊部晴美
■出演:浜田光夫、山内賢、太田雅子、ジュディ・オング、西尾三枝子、和田浩治、菅井一郎、下条正巳、ザ・スパイダース
エレキ狂いの青年たちがバンドを結成、勝抜きコンテストに出場して優勝を目指す──。山内賢、和田浩治ら日活俳優によって結成されたバンド、ヤング・アンド・フレッシュを中心に、若手スタアが活躍する傑作エレキ青春映画。
これまで見た昭和ショウビズ映画3作の中ではこれがピカ1の傑作。個人的な好みは勿論のこと、映画としての質・完成度においても。昨日見た『日本暗殺秘録』以上の出来といってもいいすぎじゃない。主演コンビの浜田と山内はともに既に日活の大スターで、浜田は吉永小百合との数々の共演があり、山内はこの映画と同じ66年に『二人の銀座』(デュエット和泉雅子作曲ベンチャーズ)が大ヒット。名前では浜田が一番手だが、ここではむしろリーダー役の山内のほうが目立ってる。とにかくギターがほんとに巧い。何しろ作中のアマチュア・バンド=ヤング&フレッシュというのは架空じゃなく実在で、最初からそれありきの映画なのだ。勿論浜田以外の4人は実際のメンバーで、和田浩治が矢鱈ドラムが巧いのも当然なわけだ。彼らのパフォーマンスが吹き替えじゃなく本物だからこその迫力が映画そのものを強力に牽引してる。その音楽に乗せて成功あり挫折あり恋愛あり別れありの青春群像を明るく爽やかに描いてる、とはいえるが決して優等生すぎるわけじゃなく、GSブーム初期には全国どこででもこれに似た光景が繰り広げられていたはずと思わせる。実際若者たちが誰でも気軽にバンドを組める今に続くムーブメントの最初はこの時期だろう。それ以前となるとジャズとかアメリカン・ポップスとかちょっと気どってたりお洒落で都会的だったり特殊な教養や情報や人脈を持ってたりするごく一部の層の若者しか手を出せない世界だったろうが、テレビの普及とエレキ&GSのブーム爆発でどんなド田舎の水飲み百姓の洟垂れ小僧だろうとやりたければ簡単にやれるようになった。それは実は革命的なことだったにちがいない。その後の所謂ロックやニューミュージックの連中は自分たちが日本の音楽史を創ったような威張ったことばかりいってるが、彼らだってこの原点がなければそもそも存在しえなかった。この映画はそんな日本芸能史の重要な転換点を再認識/再確認させる(大袈裟に見えるがほんとのことだ)という意味でも非常に面白かった。
が、そんな振りかぶったことをいわずとも、芸能オタク的なトリビア観点だけでも十二分以上に面白い。例えば上のスチール ↑ の真ん中の主演トリオ(左浜田・中央和田・右山内)はいいとして、左右の女性陣が誰か判るだろうか? 左はバンドのボーカルに加わる謎の少女役ジュディ・オング、右は山内の妹役の太田雅子=のちの梶芽衣子だ! 他にもオープニングで三木鮎郎が特別出演してたり、クライマックスのスパイダースとの競演シーンの司会役で藤村俊二が実際さながらの巧いMCぶりを見せたりと、細部でも目の離せないシーンが目白押しだ。そして何といっても先輩バンド本人役のザ・スパイダースを抜きにこの映画は見れないし語れない!
昔旧ブログでも書いた憶えがあるが、スパイダースは一番好きなGSで、とくに堺正章のパフォーマンスのカッコよさは余人を寄せつけなかった(但しソロ後のマチャアキは大嫌いだが)。その片鱗は本作でもかなり窺えるが、「ノー・ノー・ボーイ」が聴けたのはよかったものの折角だから「フリフリ」もやってほしかった(「バン・バン・バン」は翌67年のだから仕方ないが)。なお井上順は既に加わってたはずだが、この映画にはなぜか出ていない。
ところで作中でヤング&フレッシュが唄う「青春ア・ゴーゴー」(詞青島幸男)は当然レコード発売されてて、これがジャケ写 ↓ 。(※名義=山内賢 日活ヤング・アンド・フレッシュ)
このうち中心メンバーである山内は残念ながら2011年67歳の若さで逝去し、和田はもっと遥かに早く40代で病没。左端はギター杉山元、右端ベース木下雅弘。なお他に杉山の兄・俊夫もメンバーにいたとのことだが、このジャケ写にはおらず映画にも出ていない。元々のリーダー格らしいので裏方にでも回っていたのだろうか。
また浜田光夫も単独でこの曲を出してる ↓ 。演奏スパイダース。
さらに何とそのスパイダースも自分たちでちゃっかり出してる!↓ 。
↑ ではこの写真は誰が誰か? 左から堺正章(Vo)、かまやつひろし(G,Vo)、リーダー田辺昭知(D)、井上孝之(堯之G)、井上順(Vo)、加藤充(B)、大野克夫(スチールギター)。のちに堺が『時間ですよ!』や隠し芸で一世風靡し、かまやつが「我が良き友よ」大ヒットさせ&崩壊したベルリンの壁の上で「バン・バン・バン」唄い、田辺がタモリや永作博美や堺雅人らを抱える田辺エージェンシーを起こし(&小林麻美を嫁にし)、井上孝之が井上バンドを率いて『太陽にほえろ!』『傷だらけの天使』のテーマ曲を作り、大野が「勝手にしやがれ」を作曲してレコード大賞をとるなどとは、このときはまだ誰も夢にも思ってないというのが不思議な気がする。
ってことでここでは映画クライマックスでの競演によるこの曲をあげておく ↓ 。
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