『踊りたい夜』

ラピュタ阿佐ヶ谷〈素晴らしき哉、SHOWBIZ人生!〉にて4/12『踊りたい夜』。

 1963年(S38)/松竹大船/カラー/98分

■監督・原案・脚本:井上梅次/撮影:小杉正雄/美術:岡田要/音楽:広瀬健次郎
■出演:水谷良重倍賞千恵子、鰐淵晴子、有島一郎佐田啓二吉田輝雄根上淳藤木孝穂積隆信、松井康子、宇佐美淳也

【ダンサー三人姉妹「ピンク・タイツ」が繰り広げる恋とショウ・ビジネスの世界──。井上梅次監督お得意のミュージカルもので、水谷良重倍賞千恵子、鰐淵晴子のチャーミングな歌と踊りが存分に堪能できる。】

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これは凄い。『青春ア・ゴーゴー』をも上回って今までの最高作。ポイントは1963年つまり66年公開の『青春…』に3年先立つ映画であること。なぜそこが重要かといえば、端的にいってビートルズの来日が66年だからだ。ビートルズ公演のテレビ中継を頂点としてエレキ=GSブームが全国津々浦々まで席巻し、それまでのお洒落なショウビズの世界が過去の古臭いものとされてしまった。この映画はその〈過去〉のほうに属する。ビートルズの本国デビューは62年で、欧米ではその後のわずか1、2年で人気が爆発していたとはいえ、日本の片田舎の洟を垂らした脳足りんのガキどもまでが電気三味線をジャカジャカ掻き鳴らし始めるようになるまでには66年の来日時まで待たねばならなかったが、そのときの大転換は子供の目にもショックだった、それまで『若い季節』や『7時にあいまショー』や『ハッピー・バースデー・ショー』などで憧れていたお洒落で都会的なショウビズの世界がテレビ画面から一掃され、代わりにダサい(なんて言葉はなかったが)格好したどこにでもいそうなニイちゃんどもがこぞってジャカジャカやってるのしか見れなくなったときには本当に落胆した──但しそれも一瞬のことで、逆にそこからあまりにも急激に日本独自の奇形的な発展(or頽廃?)を遂げていくGSに却って目を奪われることになるのだが…

それはともかく、この映画はそんな忘れていた〈転換点以前〉の夢の世界を怒濤のように甦らせてくれる。最大の見どころは何といっても3人娘を中心とする歌・踊りのエンターテインメント・シーンだ。とにかく全ての完成度が高い! セクシーな網タイツでのステージは勿論だがそれだけじゃない、随所に挟まれるパフォーマンスのどれもがカッコよさの極致だ。女性陣のみならずとくに藤木孝の踊りのキレの素晴らしさは素人目をも釘づけにさせる。それからこの映画を評してるブログを見ると鰐淵晴子の可愛らしさや倍賞千恵子の意外なグラマーさなどにばかり目が行きがちなようだが、本当にこの映画を担ってその価値を高めているのは長女役の水谷良重(現八重子)だ。作中の台詞にもあるが、実像でもこの人は日本人離れした天才的なエンターテイナー──いやむしろ日本人〈だからこそ〉の、というべき──だと思う。歌と踊りに入った途端に一瞬でその世界をかっちり描ききってしまうスケール感は妹役の2人の追随を許さない。『銭のとれる男』で俄然注目したが、この主演作でその期待が実証された。この人の出演作はもっと見てみたい。

なお上 ↑ のスチール写真は白黒になってるが本篇は総天然色。それと監督井上梅次は香港で本作のリメーク版『香港ノクターン』というのも撮っててそっちはDVD化されてるが順番が逆じゃないか、オリジナルのこちらも出してほしい買うから。

( ↓ 後年のインスタント・コーヒーのポスターでの水谷さん)

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