内田吐夢『警察官』

5/1神田古書街に出たついでに神保町シアター〈巨匠たちのサイレント映画3〉内田吐夢監督作『警察官』(1933)。

http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/program/silent3.html

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↑ 左主演・小杉勇、右内田吐夢。サイレントだが今回はピアノ伴奏付き。テーマ的には警察官の懊悩になるが、それよりとにかく〈見せる〉映画として凄い。最初は普段馴染みのない当時の日本の風俗や風景にやや戸惑うが、中盤からラストまでの徐々に盛り上がる息もつかせぬ緊迫の展開は俄然目を瞠らせる。クライマックスは悪の組織対警官隊の深夜の大銃撃戦! 予想もしなかったその大迫力は目を疑うほど。当然ながら白黒なので自ずと光と影の効果で魅せるが、やはりドイツ表現主義とかの影響はあるんだろうか。でも昔ビデオで見た『カリガリ博士』や『ノスフェラトゥ』の静的で芸術性志向風の効果よりももっとダイナミックというかスペクタクル重視と思えるのが大いに好感。とくに主役の警察官(小杉)とその親友である敵のボス(※これは最初からほぼ明かされてるのでネタばらしにはならないだろう)が一瞬の光の中で相まみえる場面は『第三の男』のオーソン・ウェルズ登場シーンを連想させたが、まさかこの映画が影響していないか、あちらは戦後だし? それにあちらもたしか親友が悪役だったような。ひょっとしてキャロル・リード内田吐夢をこっそりリメイクか? …こちらは原作G・グリーンじゃないから勿論そんなことはないだろうが、でもなんだかフィルム・ノワール(と言うものについてはよく知らないが)の遥かな先駆け的な感じはたしかにありそう。…がそんなことはどうでもよくて、肝心なのはとにかく期待を遥かに上回った面白さでありめっけものだったこと、それだけで充分。サイレント侮れず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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