ジョン・コリア『ミッドナイト・ブルー』

井上雅彦編ジョン・コリア『ミッドナイト・ブルー』(植草昌実他訳 扶桑社海外文庫)。

2007に出たとき買ったきりだった『ナツメグの味』(垂野創一郎他訳 KAWADE MYSTERY)も帰宅の機にこの際読む。

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 両方ともいい! とくに両書とも新訳・初訳の訳文が溌剌としてる。『ナツメグ…』では和爾桃子訳のちょっと行きすぎ感、『ミッドナイト…』では植草訳の語彙の広さ+ここ一番の躍動感に感心する(おいらなんか言葉知らない上に同じような言い回ししかできないのでほんと見習わないといけない)。そんな植草訳が活きてる「またのお越しを」「よからぬ閃き」「つい先ほど、すぐそばで」などがとくに個人的好み。この両書どちらも本邦独自編纂とのことでそれぞれに編者の細心さが感じられる。『ミッドナイト…』のほうは大半が個人作品集初収録だが決して落穂拾い的な感じじゃない。この作家〈落穂〉のほうにこそいい実が付いてたりってことがあるらしいのも大きいのかも。残酷の詩人コリアといえば「みどりの想い」(『怪奇小説傑作集2』)の視覚的イメージの強烈さと、『炎のなかの絵』(異色作家短篇集6)の「夢判断」などのゾゾッという戦慄が相俟つ作家。今度の両書では『ナツメグ…』のほうが比較的グロテスクさショッキングさの勝った作風とすれば、『ミッドナイト…』のほうは短くてもツイストの鋭さで魅せる、といえるだろうか。編者井上雅彦が某作の前書きに記しているように「語られていない部分が重要」だったりするので想像力解釈力が試されるところも刺激的。またこれまで散逸したままだった伊藤典夫訳の3篇を初めて1書に集めた点が編者井上氏の思い入れだったらしい。とくに「夜、青春、パリそして月」は70年代に『Men's Club』誌に掲載されたきりだったようで、媒体の意外さに驚く。また両書とも解説(by植草、垂野)で〈奇妙な味〉という語を使わずにコリア像を描いてるのが個人的に好感。乱歩以来というその言葉、ジャンル名として定着感があるとはいえ従来異色作家といえばとかく「そういっとけばいい」的に頼りすぎてきた観があるので。その解説でいわれているように、多岐多彩でいながら「そのほとんどに「男と女」のテーマが結びついて」(植草氏)いるところなど狩久に通じるのでは、などとまた我田を思ったりもした(狩もCM創ったりなどTVに関わってたし、ドラマ脚本家だったコリアとどこか似通ってるとしてもほんとに満更じゃないかも?)。

『予期せぬ結末』シリーズ次巻はチャールズ・ボーモントとのこと。編者序文から井上氏と植草氏の抜群のコンビネーションが窺えるので、次もいい本が期待できそう。

 

というわけで植草さんにあらためて感謝!

予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー (扶桑社ミステリー)

予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー (扶桑社ミステリー)

ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)

ナツメグの味 (KAWADE MYSTERY)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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