黒沢清/『ヒッチコック』

7/27土・新文芸坐(池袋)オールナイト〈監督デビュー30周年記念 黒沢清が見つめたセカイ 第1夜〉役所広司主演特集、『カリスマ』『降霊』『ドッペルゲンガー『叫』

http://www.shin-bungeiza.com/allnight.html 

黒沢清は一番好きな監督の1人。この人の映画の場合(いやこの人に限らずほんとはみんなそうなんだが)「これは傑作だがあれは凡作」などという薄っぺらい見方ができない。全作が、というより全シーンが個性というか作家性に溢れてる。とくに黒沢清といえば机・テーブル・椅子・壁・床・カーテン・窓etc…とそれらを行き来する人の動きの何ともいえない魅力だ。今回はもうそれを集中して見たくてしょうがなかった。折しも役所広司を交えての冒頭鼎談で〈場所〉の話題が出て興味深かった。で今回の4作で最愛なのは『カリスマ』での風吹ジュンと妹役洞口依子が2つの部屋を延々と行ったり来たりするシーン ↓ 。

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ここはもう完璧。いつまで見てても飽きない、いつまでもやっててってぐらい。しっかしこの2人何してんのかね? まー調べ物したり記録したり雑誌めくったりだろうが何してるのか基本よく判らない。黒沢の人物はつねに全員そうで、移動・行為・位置・場所の妖しさを体現する。開け放たれた窓で風になびくカーテン、それに矛盾しつつ煌々と燃えるストーブ! 因みに『カリスマ』のその他大勢的なところで『コワすぎ!』の大迫茂生が出てるのを発見。

↓ 『降霊』。風吹・役所・きたろう・草彅剛。

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↓ 『ドッペルゲンガー』役所・柄本明永作博美

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『叫』。葉月里緒奈が見れる貴重作。〈取調室〉の特異さが鼎談で触れられてたがたしかにあれは凄い。

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なお同鼎談によれば今回敢えて外されてた最人気作『CURE』で、ラストのファミレスのシーンが〈ない〉バージョンがあるらしい。つまりあれはあとで付け足したシーンらしいが、しかしあそこあってこその『CURE』という感があるので意外ではある。

因みに個人的フェイバリットは『DOORⅢ』↓ 。これもオフィス・机・椅子のドラマで、そもそもここから魅せられたといえる。

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ところで同じ新文芸坐で同日昼に『ヒッチコック』も見たがhttp://eiga.com/movie/53421/ 折角アンソニー・ホプキンスが熱演してるのにいかにもハリウッドな底の浅さが残念至極。同じ題材でも黒沢清や白石晃士が撮れば絶対こうはならないという典型例になりすぎてる。

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某有名俳優が「前政権の仕分け政策が邦画をダメにした」とかくだらんこといったらしいが全く情けない。入館料の他に時の権力に手揉みして税金まであてにするような腐った根性で撮ったり演じたりした映画が面白いわけは絶対にないし、そもそも今の日本映画こそが世界最高レベルにあることを全く解ってないのが信じがたい。カネなんかなくたって〈その気〉と才能さえあればスマホのビデオでだっていくらでも面白いのが撮れるはずだ、オレだって撮れるぞ──その気と才能さえあればだが。