映画版『事件記者』その3

雪を押して懐シネを観る。

 

2/14ラピュタ阿佐ヶ谷 』〈BUNYA-SPIRITS〉より『事件記者 拳銃貸します』(1962)。http://www.laputa-jp.com/laputa/program/jikenkisha/

【続発する銃撃強盗事件の背後に浮かびあがったのは拳銃貸し屋──。ブン屋魂に燃える個性豊かな記者の面々が、凶悪事件と犯人逮捕を追ってスクープ合戦を展開。「新聞のモラル」「報道のあり方」にも迫ったシリーズ第九作。】

(※ネタバレ注意→) http://movie.walkerplus.com/mv20467/

(※以前〈記者物語〉シリーズでも上映されたらしい http://www.laputa-jp.com/laputa/program/kishamonogatari/sakuhin3.html )

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闇拳銃貸し屋を演じる悪役俳優山田禅二の面相が強烈( ↑ 右端。中央沢本忠雄)。

監督(山崎徳次郎)も音楽(三保敬太郎)も同じながらかすかにテイスト違うようなと思ったら前作(「狙われた十代」1960)から2年という時間を経ての作だからか。記者クラブ&捜査陣の人員も微妙に増えてるが、定番ネタはいずれも健在で安堵。「へいへい相沢」「そのことそのこと」「バッキャロー!」。

ただ今回菅(沢本)が自主規制に疑問を持つ局面があってわずかにオヤと思った。つまり当時のこの種の集団捜査系ミステリードラマ(これは映画だが)は組織内部の「本気の」軋轢というものを決してウリにしていなかったからだ。つまり現今のように上層部と現場の対立とかキャリアとノンキャリアの競争といった要素を「面白さ」の基盤に据えるという発想がまだなかった。『事件記者』『七人の刑事』の昔から始まり『太陽にほえろ』の頃でさえまだそうで、組織の全員が均しく記者魂や正義感に燃えて和気藹々とやってた(破天荒な若手刑事もラストではボスに頭撫でられて笑い合ってた)。本気で組織に逆らう問題児やそれを本気で潰そうとする悪い上層部がようやく出てくるのは多分『踊る大捜査線』あたり、つまりごく最近のことにすぎない。『事件記者』では各紙が熾烈な取材合戦をやりはするがそれはあくまで所謂「いい意味での」競争意識であって決して「本気で」喧嘩することはない。仮に悪徳刑事や一匹狼記者がごくたまに出てくることがあるとしてもそれは決して主演陣サイドではなく悪役やゲストとしてであるにすぎない。だから菅がキャップ(永井智雄)に一瞬「本気で」逆らうシーンにオヤと思ったのはそこに数十年後にようやく現われる青島刑事のかすかな萌芽を垣間見たからかもしれない… なーんてね。

ところでこれも本筋からは全く逸れるトリビアだが、微妙に増えた記者たちのなかにあの「伊藤雄之助」の顔を発見してちょっと驚き、冒頭のクレジットで名前見た覚えがなかったから首かしげつつあとで検索したら…判った正体は「伊藤寿章(としあき)」、なんと雄之助の実弟だ。2、3あった科白が雄之助にしては妙になめらかすぎたのも頷ける。この寿章さん後年は「澤村昌之助(しょうのすけ)」という歌舞伎役者になってる。長兄二代宗之助・父初代宗之助という芸能一族。

↓ 左伊藤寿章として別映画で社長役、右澤村昌之助として歌舞伎にて。

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