パトリック・クェンティン『女郎蜘蛛』

パトリック・クェンティン作の演劇プロデューサー探偵(といっても所謂快刀乱麻の名探偵ではなく寧ろ巻き込まれ型の)ピーター・ダルース(と妻アイリス)シリーズ、端緒作『迷走パズル』から『俳優パズル』『人形パズル』と順次出た創元推理文庫版〈パズル物〉をどうにか読み継ぎ追いついたところで(但し他社から出た『悪女パズル』『悪魔パズル』『巡礼者パズル』は未読のままだが)… 

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…伝説の作品『女郎蜘蛛』が新訳で刊行されたので今度ばかりは早速読んだ。

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〈パズルもの〉3作の面白さは、波乱に富んだ展開、独特のユーモア、畳みかける会話の妙、鮮やかなツイスト、魅力的なミステリアス要素=演劇・俳優・女優・幻聴・病院・幽霊・人形・鏡 ・サーカス団 etc… が短い中にこれでもかと詰め込まれてるところだったが、この『女郎蜘蛛』はその中でも〈波乱の展開〉と〈鮮やかなツイスト〉をとことん突き詰めた出色の傑作だった。登場人物全員のキャラクター造形が明確な上に各人の心理面の展開が巧み(一人称小説なのにそう思わせるのが創作のワザなんだろう)で、そこから来るサスペンスの盛り上がり度がハンパない、とくに終盤のクライマックス! 但し唯1人キャラクターも心理も〈謎〉であり続けるのが最大のキーパーソン=少女ナニーだ。早々と死んでしまうのに死後もダルース夫妻を(とくにピーターを)翻弄し恐怖の迷宮に陥れていく様子はさながらミステリーの形を借りたホラーのようでもある──近頃語られないジョン・ソールの少女怪談物をそこはかとなく思い出させすらした。いやこれはほんとにイイ。今まで幻の作だったのが勿体ないほど。「何はともあれ手にとって」「必要な知識も条件も一切ありません」という川出正樹氏の解説は真実。「掛け値なしの傑作」の帯も掛け値なし。(訳文も言葉選びがよくて学ばせられる) 

 

  

迷走パズル (創元推理文庫)

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俳優パズル (創元推理文庫)

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