ロバート・ブロック『予期せぬ結末3 ハリウッドの恐怖』

ロバート・ブロック『予期せぬ結末3 ハリウッドの恐怖』(井上雅彦編 扶桑社ミステリー)を訳者の植草昌実さんよりいただき、早速拝読。

f:id:domperimottekoi:20140607204939j:plain

パトリック・クェンティン〈パズル〉シリーズの余韻の残るところにロバート・ブロック×井上雅彦のノスタルジック&ファンタスティックな世界が「そら来た!」とばかりに届いたのはほんとに共時性を思わせた。奇術師、柩、マント、クローゼット、骸骨、蛇、猫、野宴、牧神…そして何より映画(テレビも含めて〈映像〉のほうがいいかも)…妖しく怪しいアイテムの数々によるツイストの利いた語りにはたしかにクェンティンとブロックが繋がってる気がする。中でもやはりブロックは何よりも〈映画〉だ。収録の一篇「プロットが肝心」に代表される「映画そのものを小説のテーマにした」ことを編者井上氏はこの作家の「独特の遊戯」と呼ぶ。とくに個人的にはスタニスラフスキーメソッドなるものが出てくる「殺人演技理論」が、憑依系女優?上野樹里の連ドラ『アリスの棘』に魅せられてる折だけにオォッと関心惹かれた。また表題作「ハリウッドの恐怖」は原題Terror over Hollywoodの中の「over」のイメージどおり聖なる林を覆う黒々とした恐怖が魅力的。詩的な小品「心変わり」「弔花」も捨てがたいが、詩的と言えば植草氏渾身の新訳「影にあたえし唇は」が白眉。〈影〉〈夢魔(スクブス)〉〈愛〉の絡まる凄絶さの奥に懐かしく深い余韻が蟠る。

最後にこれまた個人的にやや別格なのが掉尾の「ムーヴィー・ピープル」だ。というのは昨年刊行の『シルヴァー・スクリーム』中の「女優魂」と題した拙訳作の伊藤典夫氏による初訳版だから。遺憾ながらこれを参照せぬまま訳した身にとっては今回の再録は快哉、と同時に忸怩でもあり… が伊藤氏の名訳と比べられる栄に浴せるだけでも以て瞑すべしかも… (蛇足だが某Jホラー映画をもじった当方の邦題「女優魂」はヤリすぎと読者には不評だった…)

 

余談をひとつ。過日某所で井上雅彦さんとお会いした折、「『シルヴァー…』というのをお贈りしましたが…」と水を向けたところ、まだ届く前だったか「ああ昔それ聞いたことありましたね」とのお言葉(何しろ〈昔〉の本なので無理もなし)。がその後手にとってくれたに違いないと思い併せると、今般の『ハリウッドの恐怖』はひょっとして井上さん『シルヴァー…』に幾許か触発されるところがあったのでは? などとまたぞろ我田引水脳内麻薬が出てしまうのだが…しかし勿論、この叢書が植草氏とともに以前から練りに練り続けてきたものであることはとうに聞き及んでいるところ。いやでも、そんなふうに秘かに夢想するのも楽しいじゃないですか? …

 

というわけで植草さんありがとうございました! 

予期せぬ結末3 ハリウッドの恐怖 (扶桑社ミステリー)

予期せぬ結末3 ハリウッドの恐怖 (扶桑社ミステリー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

.