ジャック・ケッチャム他『狙われた女』

 ジャック・ケッチャム他『狙われた女』(扶桑社ミステリー)を読む。

http://www.fusosha.co.jp/mysteryblog/2014/07/post-292.html

面白い!

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 冒頭を共通させての競作という趣向だがそこは超個性派の3作家、タダで済むハズがない。巻頭作ジャック・ケッチャム「シープメドウ・ストーリー」(金子浩訳)は売れる前の作者自身がモデルという主人公ストループのブレークのきっかけとなった事件を描いて「まさか事実?」と思わせる(作者が作者だけに)ユニークな作で、短いながら流石の語り口。この〈ストループ物〉を集めた作品集もあるそうなので是非出してほしい勿論金子さんの訳で。(〈ケチャップ〉の逸話には笑タ)

リチャード・レイモン「狙われた女」(尾之上浩司訳)は伝説の〈野獣館〉シリーズ彷彿のバイオレンス作でこれまた快哉! 極限状況&救いのない話にもどこかユーモアを感じさせるのがこの作家の美質? 没後も海外ではベストセラー作家らしいのでこれを機に本邦でも復活を(大森望さんはSFで多忙そうだから尾之上さんの力で是非)。

最後のエドワード・リー「われらが神の年2202年」(尾之上浩司訳)は唯一長篇級分量のSFオカルトホラーで、そちら方面のパロディが色々ぶち込んであるらしいが、オイラのように疎くても構わず楽しめるように書かれてる。…ていうかラストで驚くわこのネタ!ていうか笑タわ。…というのは兎も角として、この作家個人的に昔ちょっと気になってた時期があり、あまりの破壊的さぶりに日本ではまず無理だなと思ってたので、今回本格紹介され非常に嬉しい。本篇でも破壊性が随所で発揮されてる。この人も今後尾之上さんに是非頑張っていただきたい。

総じてケッチャムはどこかリリカル、レイモンはどこかコミカル、リーはどこかサブカル? と各々の特徴もよく出て(真に受けないで下さい)近年久しくなかった路線の絶好の企画。解説によればここからの発展プランも色々ありそうなので、扶桑社ミステリー目が離せない。金子さん尾之上さんに拍手! 

狙われた女 (扶桑社ミステリー)

狙われた女 (扶桑社ミステリー)

 

 

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