12/7神保町シアター『大根と人参』(1965松竹 渋谷実)
http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/program/kuwano_list.html#movie10
http://movie.walkerplus.com/mv21375/
↑ 笠智衆 加賀まりこ(右) 岩下志麻(左)。(※本篇カラー) 加賀は娘役で出ずっぱり準主演の1人(もう1人は妻乙羽信子)だが岩下はゲストで数分のみ。
この映画の最ポイントは監督・脚本が『悪女の季節』↓ の渋谷実であること。
http://domperimottekoi.hatenablog.com/entry/2014/09/13/000000_1
つまり原案としてクレジットされてる小津安二郎風の世界を借景にしたブラック喜劇だ。当然小津ファンが小津と似た路線を予想して観るわけだが案の定とまどいや無理解という結果になるようだ。劇場サイトでの紹介でも「小津の企画に滑稽味が加わった」などと苦し紛れな書き方がされてるが滑稽味どころのレベルじゃない全くの別世界。ブラック過ぎて現代ではストーリーになりえない展開すら散見される。大筋は主人公笠が突然行方を晦ましたためのてんやわんやだが、これは当時社会問題化し始め流行語になりつつあった〈蒸発〉と思われ(佐藤慶主演の『蒸発』というドラマまであった)それが小津の原案に既にあったとすればたしかに先どりと言えそう。笠は61歳だが設定は52歳で格闘するやら転んで尻餅つくやらアクション三昧、老け役とは逆の若作りというのはこの人では珍しいんじゃないか。なお特集女優桑野みゆきはまたも娼婦役(出番わずか)、一緒に加東大介も出てくるのでラピュタ阿佐ヶ谷で進行中の加東特集に入れてもよさそうな1本。
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