アイ・ジョージ『硝子のジョニー 野獣のように見えて』

9/6 神保町シアター『硝子のジョニー 野獣のように見えて』(1962日活 蔵原惟繕)

http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/program/ashikawa_list.html#movie10

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アイ・ジョージ 宍戸錠 芦川いづみ。冒頭「芸術祭参加」と出る。映画ファンの間では高評価のようだがそうとは言えない自分には残念ながらかなり不満だった。別に芸術志向だから即嫌いと言うわけではないが、芸術志向になればなるほど類型と陳腐に陥るという皮肉な現象の好例になり過ぎている。それは主に台詞が活き活きしていないこと(主演陣3人以上に脇役の台詞にとくに顕著)に原因の過半がありそうなので脚本の問題ということになるのかもしれないが。ストーリー自体はユニークなところを突いている(悪役とか正義とかいった概念に揺さぶりをかけるあたりとくに)のでやはり台詞の拙さが一番ではないかと個人的には思う。

が俳優陣はみな熱演を極める。宍戸錠には以前から感心しているが今作ではそれ以上にアイ・ジョージに驚かされる。とくに終盤長科白をワンショットで独白するシーンは、下手な役者なら文字通り芝居がかってしまいそうな難しい身の上話を自然この上なくやってのけたのには固唾すら呑んだ。これまで2、3観た出演作でも台詞の巧い人だなと思ってはいたが今回は感嘆の域。この人といい水原弘といい御三家(舟木 橋 西郷)といい荒木一郎といい女優でも越路吹雪や三人娘(美空 江利 雪村)といい、本業歌手の人たちには専業俳優以上に巧い人が多いのではとさえ思わせられる。

ただ特集女優の芦川いづみは大変な熱演をしてはいるが惜しむらくは殻を破り切れていない気がしてならない。難役なのは判るがそうであればこそもっと突破してほしかった。知性的で清楚なところがこの人の素ではないかと思うがその面が強すぎるせいか。前日観たばかりの若い頃の大原麗子ならこの役は素のまま(?)やれるかも──無意味な比較ではあろうが。

ラスト近くアイ・ジョージ主題歌ワンコーラスのみ弾き語り注目。