千田是也 左幸子『誘惑』

7/17(日)ラピュタ阿佐ヶ谷『誘惑』(1957日活 中平康)

http://www.laputa-jp.com/laputa/program/idetoshiro/sakuhin3.html#23

http://movie.walkerplus.com/mv25248/

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↑ 上 左幸子 葉山良二 左下隅 芦川いづみ

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千田是也 左幸子。振りあげているのは台所用ライター。

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轟夕起子 左幸子

驚愕の大傑作。事前情報一切入れず&さして期待せず観始めたが中盤から徐々に大変な作かもしれないと認識 観終わってみれば上京後昭和映画耽溺して以降4年弱での最高域の感。井手俊郎流群像劇の凄さは『月夜の傘』(1955) ↓ …

http://domperimottekoi.hatenablog.com/entry/2016/06/24/212631

…で瞠目したが今作はそれを上回る神懸り的異才爆発。誰が主役か判らなくなるほどに脇役の1人1人まで肌理細かく見せ場配る独特作劇術が最大限開花。上のポスターでは左&葉山カップルが主演のごとくだが実質はあくまで千田&左 父娘が主役 その周りで助演陣が入れ替わり立ち代わりでスポットライト浴びる井手得意の構成。また各人物の内密の心理を其々のナレーション風呟き声で表現するユニークな手法は脚本と演出(中平康)の密な連携を要すると思われ。千田は『月に飛ぶ雁』(1955)で一度見たが主演初見の今作でのトボけた茫洋さ絶品。劇界重鎮にして映画出演多数ある由だがこれが代表作に入れられていないようで疑問。その父を翻弄する役どころの左 溌剌の魅力全開。『月夜の傘』で注目させられた轟 今回はコメディエンヌ才倍増。芦川 鍵となる役でこの人目当ての映画ファン多いようだが実は出番僅か。後年強面役で鳴らす葉山 一応?二枚目どころ。安井昌二 渡辺美佐子 小沢昭一 其々に軽妙さ巧み(井手の変名「大橋参吉」小沢の役名なのが可笑しい)。二谷英明 宍戸錠 台詞ないちょい役。岡本太郎 東郷青児ら本人役客演 とくに岡本 如何にも言いそうな台詞を力強くこなし微苦笑誘う。千田との談笑シーンは実生活での交流思わせる自然さ。お話自体に高尚な芸術志向(伝統・革新ともに)へのかすかな皮肉の気味があるだけに大家たちの懐の深さも。またこの映画自体芸術祭参加作品乍ら所謂「芸術」臭が微塵もなく万人が愉しめる準喜劇型明朗娯楽作であるところこそが最大の値打ち。終映後すぐにでも再見したくなる映画も珍しい。観るごとに重要な見落とし&新発見多数ありそう。

伊藤整の同題原作(未読) 今では忘れられているのか出回りは古書のみの模様。脚本とどの程度違うか/同じか若干食指。

↓ 冒頭 父娘朝食シークエンス 名場面。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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