5/4木 ラピュタ阿佐ヶ谷『刑事物語 前科なき拳銃』(1960日活 小杉勇)
http://www.laputa-jp.com/laputa/program/keijimonogatari/#05
http://www.nikkatsu.com/movie/20459.html
(ネタバレ注意) http://movie.walkerplus.com/mv22887/
↑ 下 益田喜頓 青山恭二 上 中川姿子(左) 南風夕子(右)。『刑事物語』シリーズ5作目。これまでは益田の人情刑事傾向がやや過度で はみ出し者気味だったが今回は息子青山始め他の捜査陣との噛み合いがより良好に。その捜査陣では平素悪役の多い強面名優 山田禅二が主任役で堂に入った陣頭指揮。被捜査側では強盗主犯 深江章喜がいつも乍らの嵌まり。その手下 最初気づかなかったが62年に山内賢ヤング&フレッシュ結成メンバーとなる 木下雅弘。その木下の恋人&深江の情婦は前作でも共演した中川姿子と南風夕子 がともに本シリーズ2度目登場。個人的最注目の南風 民謡酒場の唄い手役でもあり「江差追分」フルコーラスで披露する設定だが吹替えか? もし本歌唱なら相当の美声&巧さだがこの人については詳細不明なのが残念。一方中川はヌード喫茶勤務。が裸晒すわけではなくウィエトレスがバニーガール風網タイツ姿で給仕する趣向の店。クライマックスはカーチェイスだがよくある山間道等でなく今回は何と東京の市街地で。時間帯はあるにせよ現代ではまず不可能だろうが迫力とリアリティを追求するこのシリーズの特質躍如。タイトルの拳銃は珍しいスペイン製ゲルニカ(実在) 日活アクションでも時折登場する模様。
↓ チラシ 右下の女優 中川と南風。
↓ 地回りヤクザ 高品格に酒を驕り情報訊き出す親子刑事。
http://www.laputa-jp.com/laputa/program/keijimonogatari/#06
http://www.nikkatsu.com/movie/20460.html
(ネタバレ注意) http://movie.walkerplus.com/mv22923/
↑ 子役 松岡高史と益田 青山。第6作にして最高傑作! 前作からややトーンが変わりこれまでの益田独り飄々から一丸路線へと舵を切ったのが増々奏効か。まず何と言っても子役 松岡の超名演が出色。現代の名子役と言うと大人顔負けの感情表現や台詞廻しの達者さが先に立つが この子はむしろ逆で顔は終始無表情に近く喋りも一本調子。がそれが却って自然さを呼び観客をいつの間にか感情移入に惹き込む。また世話役を押しつけられた益田が可愛がりながらも手を焼き「早く孫が欲しかったが考え物だな」と息子青山にこぼすのが可笑しい。またこの子役効果以外にも今回はキャスティングの妙が目立つ。前作では刑事の1人だった弘松三郎がお話の鍵となる人物設定で 当然乍ら説明ないまま冒頭から登場するのでやや戸惑わせるが 持ち前の読ませない茫洋さが適役。薬剤強盗主犯 宮崎準『浮草の宿』(57)観て間もないがこちらでも悪役嵌まり。部長刑事演じる『機動捜査班』シリーズ(同じ小杉勇監督)は翌61年から。また今作は山田禅二が一課長役となり主任役には前作で民謡酒場支配人役だった佐野浅夫があたり両者とも巧演。女優陣では3作連続出演の中川姿子が宮崎手下(杉幸彦)の恋人役で 気弱な男に尽くすキャラも前作と似通い。宮崎情婦役 南寿美子は殺しさえ教唆する根っからの悪女。クライマックスは人混みの競馬場での大捕物。いつもの壮絶なアクションは控えめだが 上述したトーンの変化もあって以前のように見どころが終盤の山場に集中する展開ではなくなり 終始手に汗握らせるのが最大且つ新たな特徴。その点でもやはり子役松岡の名演効果が大きいが そうした特殊要素抜きでも次作以降 高質が維持されるよう期待したい。
なお今回初めて短時間ながら親子刑事 佐藤家の家庭内が舞台とされる。年季入った一戸建てに住むがどうやら益田に妻はなく(死別か) 1人息子青山も独身のため 家政婦(特徴ある老け役得意の田中筆子)に頼りつつ暮らす父子家庭の模様。
↓ 左 南寿美子 右 中川姿子。がこの写真の南 どうも南風夕子に似ているようにも…?
↓ オフショット気味のスチール。松岡高史のその後は未詳。
余談 松岡が中盤から好んで七色仮面 ↓ (59~60実写ドラマ)のお面とマントを身につけプラスチック製機関銃で遊ぶが それらがある役割を担うので要注目。
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