月丘夢路は子供の頃『七人の孫』(1964)等での脇役で目にしていたため顔と名前は辛うじて憶えある人だがあまり強い印象はないまま芸名と風貌から「宝塚系の往年名女優」とのイメージを持つ程度だった。『犬神家の一族』(1977)でも主演格の京マチ子の陰に隠れざるを得ず。が近年50、60年代映画を観るようになってから今にしてようやくその女優としての特性に目を見開かされることに。と言っても既見出演作の数はまだ極めて少ないが にも拘らずその力量には他の女優にないものを感じさせられた。その契機は鰐淵晴子と親子を演じた『母と娘』(1961) ↓ で…
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…ここにも書いたが所謂「演技力」にかけては男優では佐野周二 女優ではこの月丘がトップではないかとまで思ったほど──僅かこれ1作で。と言うのは演技の「自然さ」と非現実としての「芝居」とがこの人ほど絶妙に同居している例が他にすぐには思い浮かばなかったゆえに──作数はまだまだだが俳優の数だけはかなり観てきた中で。台詞廻しのみならず目鼻口の微妙極まる動きまでが精緻繊細に考え抜かれ万全に操られていると感じられた。山田五十鈴 轟夕起子 越路吹雪 司葉子 岡田茉莉子 団令子 水野久美 高千穂ひづる 嵯峨三智子 野川由美子…同様の面で巧みな女優多々いるがその中でも思い出すかぎりこの人が最高域。さらに日活時代の隠れた傑作『素晴しき男性』(1958) ↓ ではそれに加えてパフォーマーとしての底力にも瞠目。
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…とは言え40~50年代前半の名作・主演作群は依然全く未見なので偉そうに書いても説得力はわれ乍ら疑わしい。が当面は助演に廻ってからの時期の娯楽作群をもっと沢山観ておきたいとは思う。ゆえに自分の中での月丘夢路はまだ存命活躍のまま。
↓『母と娘』にて佐野周二と。
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