5/15月 ラピュタ阿佐ヶ谷 『刑事物語 ジャズは狂っちゃいねえ』(1961日活 小杉勇)
http://www.laputa-jp.com/laputa/program/keijimonogatari/#09
http://www.nikkatsu.com/movie/20506.html
(ネタバレ注意) http://movie.walkerplus.com/mv19952/
↑ 左 白木 宮崎準 青山 右4人 不詳(左2人 白木クインテットメンバー? 右端 森みどり?)。
シリーズ第9作。ストーリー上のメインゲストは常連の1人トランペッター役 上野山功一だが今回のハイライトは何と言っても著名ジャズドラマー白木秀雄の俳優としての出演で 自らの率いるクインテットとしてクレジットされ ステージシーン複数回あり(上野山と伊藤孝雄は当然吹替えだろうが)。中でも最注目はやはり白木の流麗なドラムス。57年の『嵐を呼ぶ男』では石原裕次郎ドラムのアテレコ 本作と同じ61年にはアート・ブレイキーと競演 私生活では前々年に水谷良重と結婚(のち離婚)と華々しい経歴の持ち主だが 映画ではそうした面は感じさせない堂に入った芝居で 仲間の麻薬禍を苦く見つめるあたりとくに好演。また上のスチール ↑ 右の男性2人が実際のメンバーかは不明だが もしそうとすれば序盤で伊藤孝雄とともに麻薬打つシーンなど こちらもなかなか巧みな演技。が残念ながらその道に疎いため検索しても顔と名前一致せず未詳(※追記 サックス松本英彦 ピアノ世良譲らがいたようだが若年時の相貌でもあり依然不詳)。上野山はいつも乍ら大仰に走らないクールさが佳。他には伊藤寿章が麻薬に溺れるホームレス熱演。佐野浅夫 麻薬組織ボス役 恐演。捜査陣では前作の極悪人役 宮崎がまたも刑事役にとんぼ返り。終盤には珍しくツイスト1つあり。
因みに現在 白木のスティック捌きを見られるおそらく唯一のネット上映像がこれ ↓ 。同じ61年の『シャボン玉ホリデー』出演時で ハナ肇との軽妙ドラム合戦 必見物。
若くしてジャズ界の大スターだった白木だが 天才肌の破天荒さが災いしたか 60年代終盤急速に転落し 72年 睡眠薬中毒により39歳の若さで非業の死。偶然乍らもこの映画のテーマに重なり一層痛ましい。が近年再評価高まりアルバム再発されている由。
併映 『刑事物語 部長刑事(でかちょう)を追え』(1961日活 小杉勇)
http://www.laputa-jp.com/laputa/program/keijimonogatari/#10
http://www.nikkatsu.com/movie/20518.html
(ネタバレ注意) http://movie.walkerplus.com/mv19948/
↑ 益田 青山 ↓ 益田と野呂圭介。
シリーズ最終10作目。前作で麻薬中毒バンドマン役だった伊藤孝雄がやり手芸能事務所社長役で再出演し 青山の旧友設定も類似。また同じく2作連続の伊藤寿章が殺害されその容疑で青山が逃亡失踪するのが今回の最大特徴(この点の真相はおよそ読めるものの 一応観客にはラストまで伏せられているわけなので 劇場サイト及び各種ネット上紹介(日活サイトも!)で囮捜査と最初から明かしているのは如何なものか)。前々作での名演が記憶に新しい深江章喜 今回は軽いノリのチンピラ役。楠侑子も2作続けてだが見せ場少なし。前作で捜査陣から端役に移った山田禅二 このたびも易者役で一瞬のみ。宮崎準 刑事をやるときは下っ端が多かったが最後は何と警視庁捜査一課班長 つまり青山の上司役で貫禄の陣頭指揮。最大の見どころは 出世した息子の思わぬ転落を悲しみつつも堪えて奮闘する益田老刑事の涙ぐましい姿で 10作の集大成的熱演は拍手万雷物。一方青山は設定上 出番が極度に少なくなってしまったが ここまで来ればそれもご愛嬌か。また親子刑事自宅=佐藤家が再び出てくるが家政婦は替わっていた(福田文子?)。
なおこの最終作は1961年2月公開で 日活&小杉勇はすぐに次シリーズ『機動捜査班』製作に移りそちらの第1作が早くも同年4月公開。青山恭二が継続して主演にあたり その上司兼相棒役となるのが宮崎準で ひょっとするとこの『刑事物語 部長刑事を追え』での両人の役どころの関係性をそのまま活かしたのかも(あるいはいっそ試金石だったか)。
( ↓『機動捜査班』シリーズ既見3作)
http://domperimottekoi.hatenablog.com/entry/2017/02/18/163836
http://domperimottekoi.hatenablog.com/entry/2017/02/20/112917
http://domperimottekoi.hatenablog.com/entry/2017/02/26/205550
因みに益田喜頓は本シリーズ以後は映画にはあまり出ていないようで 『マイ・フェア・レディ』『屋根の上のヴァイオリン弾き』等のミュージカル演劇やテレビドラマに活動の場を移した模様。90年代に故郷 函館で病没 84歳。
一方青山恭二は60年代終盤か70年代初め頃に芸能界を引退し 驚くことに奄美大島に移り住んで漁師に転向したそうで 今も同地で暮らすものと思われる。現79歳。
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