6/4(日) ラピュタ阿佐ヶ谷『すずかけの散歩道』(1959東宝 堀川弘通)
http://www.laputa-jp.com/laputa/program/toho-bungei/sakuhin4.html#30
http://movie.walkerplus.com/mv25887/
↑ 多川譲二 司葉子 富永ユキ。本篇カラー。まず映画の成り立ちで1つ疑問なのは当劇場サイト始め各方面での紹介には判で捺したように「原作は石坂洋次郎のNHK連続放送劇『朝の口笛──すずかけの散歩道』」とされているが検索しても相当するラジオドラマが見つからず(「放送劇」はテレビでなくラジオを指すらしい/テレビドラマにも該当作はなし)また石坂洋次郎に同題の原作小説があるかも不明なこと。当然古いのでNHKでも記録が散逸しているのかもしれないが…
それは兎も角 本作を観てみたいと思った個人的理由は何よりも井手俊郎が脚本に加わっていること。結果 多くの人物を矢継ぎ早に反復登場させ幾つかの筋を目まぐるしく同時進行させる独特の群像劇はまさに井手流と得心。同手法による他の多くの成功作傑作に比せばその域までは至らずだが 最初から大向こう受けを狙わない肩の凝らない軽娯楽作志向なのは瞭然で その点は大いに好感。笠智衆 森雅之ら大物を配し乍ら若干勿体ない使い方をしているあたりさえご愛嬌に感じられ ある種お祭り映画の観も。軸は森と司葉子のカップルで 次が津島恵子と太刀川洋一(のちの太刀川寛)のペアとなり 太刀川は先日観て間もない『潮騒』(54)での当て馬役?が印象濃いせいか二枚目どころにはやや意外の感あるも好演。同じ年(当然撮影後だろうが)事故で負傷し復帰後改名したそうでこの映画はその意味で転機作か。その太刀川の妹役 青山京子は見せ場ひとつあるものの出演短く惜しい。司の弟役と妹役はまだ子役と言ってよさそうな多川譲二と星由里子で 星は出番少ないが多川は独特のキャラが目を惹く。が検索してもよく似た名前の歌手 田川譲二しか出てこなくて不詳。山田真二がこの多川の家庭教師役だが ほぼ序盤のみでまたも活躍せず。一方多川のガールフレンド役 富永ユキは出番多くはないが個性的なルックスと雰囲気が一見して忘れ難い。これが映画デビュー乍ら同年早くも10作近く出演『愛と希望の街』(大島渚)では主演も果たし のみならずポップス歌手としても活躍。未知だったので注目余儀なし。
因みに上のスチール ↑ で富永らが持っているのは同年流行したフラフープで 作中で幼い子供たちが遊ぶ場面があるが この3人が手に触れるシーンはない。
ところで中盤 津島と太刀川の密会を笠が偶然目に留める重要シークエンスで ナイトクラブのピアノ2台の上で網タイツ姿で唄い踊るのが上条美佐保と言うNDT(日劇ダンシングチーム)出身の歌手兼ダンサーでフルコーラスとも思える長尺曲の見事なパフォーマンスは作中最名シーンに挙げたいほど。セットとは思えない(セットには違いないが)豪華立体的なフロアで2人のピアニスト役は黒人と 不必要な?までに凝った趣向は瞠目物。上条美佐保については残念乍ら未詳だが(少ないが他にも出演作あり) こんな写真 ↓ (ベネズエラ親善旅行?)があることからして当時注目された才能だったのかも。
冒頭クレジットでは主題歌「宝田明」となっていたが エンディングで唄っていたのが女声合唱団のような歌声のみだったのもやや気になり。
また作中 鈴懸並木の散歩道はついに出てこなかったような…
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