大和田伸也 長谷川真砂美『犬神の悪霊』
6/21水 ラピュタ阿佐ヶ谷『犬神の悪霊(たたり)』(1977東映 伊藤俊也)
http://www.laputa-jp.com/laputa/program/kaikigensou/#10
(ネタバレ注意) http://movie.walkerplus.com/mv18527/
↑ 中央上 長谷川真砂美 泉じゅん 中央下 右から 泉じゅん 大和田伸也 鈴木瑞穂 小山明子 岸田今日子 山内恵美子 室田日出男 左下 長谷川と愛犬。前年(76)の角川+東宝大ヒット作『犬神家の一族』への対抗/便乗作であることはタイトルからして自明だがその意に反し興行的には振るわなかった模様。個人的には『犬神家…』の影響から同年(77)『悪魔の手毬唄』『獄門島』『江戸川乱歩の陰獣』等を公開時観たが 本作は意識外だった。今更乍ら虚心を心掛けつつ初見するも 当時の不人気も宜なるかなと言わざるを得ず。最大の難点は洗練度に欠けることで 先日観た東宝『血を吸う』シリーズや松竹『黒蜥蜴』系に比してもその面の劣勢は明らか。その最顕著要素は音楽で 土俗的怪奇味を出そうとしてかリズミカルな旋律を基調にしているが (『モスラ』系を意識?)その実 映像の方向性に合うとはどうしても思えず かと思えば場面に応じホンワカ調にしてみたり あるいは一転軽妙にしてみたりと矢鱈変え過ぎるため折角の緊迫感が殺がれまくり。またお話の面の最弱点は大和田伸也演じる主人公が最初から共感しにくいアンチヒーローとして登場することで 脚本(監督伊藤俊也兼務)はそれを承知の上で敢えての挑戦かもしれないが 成功しているとは言い難い。他にも序盤中盤での感興ブレーキ点多いが──終盤に入るや俄然迫力炸裂の展開となり瞠目と驚愕の連続に。全てはそのための伏線だったかと思わせるほどだが…やはりやや遅きに失す感否めず。俳優陣では兎に角主演 大和田 七転八倒 終始の激演。数度の擬斗&山野疾駆と生傷物の大奮闘。女優陣は泉じゅんと山内美恵子 冒頭揃って全裸魅せるもその後は泉のほうが体張りヒロイン格(大和田妻役でもあり)。が最注目は子役 長谷川真砂美で 終盤に唐突とも思える大フィーチャー 本作のアイコンに相応しい活躍。以後『ねらわれた学園』(81)等 数作出演歴あるが詳細不明。他に大物勢では小山明子は僅か乍ら見せ場あるが岸田今日子は出番少。男優要所では 室田日出男 鈴木瑞穂 其々適役。また同年『悪魔の手毬唄』で怪演した白石加代子の巫女役も目を惹く(因みに小山は同年のドラマ版『犬神家』に 岸田は前年の東宝版『犬神家』に出ているので金田一耕助物3女優揃い踏みの感)。スペクタクルも含め終局の盛り上がりは大変なもので それだけにそこに至るまでの失策の連鎖が非常に惜しい。後年カルト人気作化しDVD化済。
↓ 長谷川真砂美。後方の葬列は『本陣殺人事件』(75)を思わせるようにも。
↓ 長谷川と泉じゅん。
↓ 基調音楽。
蛇足だがWikipediaでの本作の項 堂々の(わざとであるにせよ尚更)ネタバレは頂けない。平素出典不明や独自研究等細かいことに五月蝿いWikiだが 寧ろこういうものこそ注意すべきと。また「差別に直面する物語であったが」「途中からバトルホラーになるという展開」で「焦点がぼやけた」等としているがいずれも歴然過ぎる的外れで首を傾げさせる。
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