『ノロイ』(2005 白石晃士) https://movie.walkerplus.com/mv34871/
豚蛇さんに推薦申しあげたものの あまりお気に召していただけるまでには至らなかったようで申し訳なく残念だが… ( ↓ 英語字幕バージョン)
この機に再見(3or4見?)し この映画が本質的にはクトゥルフ神話をこそ志向したものであることを改めて再確認。以下 ↓ 全て要部抵触につき注意。…
最大因子はこの物語世界の核心である〈かぐたば〉(禍具魂) ↓ なる妖異の存在で…
↑ 少女期の石井潤子が祭で付けているかぐたばの面。↓ 左 かぐたば 右 神官。
…これを巡って最肝要なのは タイトルである〈ノロイ〉の語が通例意味するところ/あるいはこの語が齎すイメージに反し この〈かぐたば〉なるものがどうやら人的な呪いあるいは心霊といった類のものではなく 魔術的儀式に参加した依り代的人材=石井潤子(演 久我朋乃))や 彼女が囲う謎の少年(演 神林秀太)や 異界との交流力を持つらしい超能力少女=矢野加奈(演 菅野莉央)や 波動に対し異常に敏感な霊能者=堀光男(演 寺十吾)らの超常的な感度や能力を利用して自らを人間界に顕現させ 何らかの凶事を為そうとしている魔界的存在であることを示唆している点にあるのは間違いない。他にも当初は常人であり乍ら多少とも〈かぐたば〉に関わるかもしくは不運にも偶々その周辺にいたために顕現に利用された挙句犠牲となった人々も多々あり そのあたりは『リング』シリーズや『呪怨』シリーズの構図にも通じるが それらでの巫女的媒体キャラクターである山村貞子/佐伯伽耶子を産んだものも実は人間ではなく何かしら異界の存在と見る向きもあり(つまり呪いや怨みのみで人を次々殺すわけではなく 真の目的は その存在がそれらの生け贄を利用して力を発現しあるいはエネルギーを蓄えることにある) その意味でも類縁性はあると言える。兎に角そうしたわけで この構図は『狂人狂騒曲』『インズマスの影』『ダンウィッチの怪』『闇に囁くもの』等ラヴクラフトの主要作を始めとして(※邦題は定本全集に拠る) クトゥルフ神話全般においてよく見られるパターン 即ち所謂旧支配者あるいは邪神等と呼ばれる存在が人間界に介入する際に 異常な力への希求を持つ個人や土俗的な異端性に傾くコミュニティ等を媒体として現出させる惨劇や怪奇と同地平にあると考えられる。監督白石は後年『コワすぎ!』『超コワすぎ!』シリーズにおいてあからさまにクトゥルフ神話とのリンクを打ち出していくが 如何せんそちらはあまりにも意識的に巫山戯過ぎている路線であるため──勿論そこが好いわけだが──必ずしも奏効しているとは言い難く むしろメジャー最初期作品であるこの『ノロイ』こそが白石のクトゥルフ神話志向の実は最成功作ではなかろうか──
ところでこの映画では配役陣とその演じるキャラクターが大きな見どころで 中でも個人的最注目は現在 令和の怪演女優としてブレイク中の松本まりか(本人役) ↓ 。
現在35歳の松本だが このとき21歳 アイドル系女優として売り出し中乍ら売れるとまでは行かず 後年「売れないことに飽きた」と述懐するほど長い不遇の時代が続く(本作の翌年2006には清水崇監督のホラー『輪廻』にも出演)。このときから注目していた身としては15年を経ての売れっ子化は慶賀で 本作は初期代表作と見るべきと。
他に個人的注目は奇矯な霊能者 堀光男 役 寺十吾(じつなしさとる)。
あまりにリアルな奇人ぶりも実像は劇団主宰 舞台演出 映画監督と実力派らしく。
↓ 一般的最インパクトと思われる 石井潤子 役 久我朋乃(くがともの)。
実像は爽やかな美貌。
特徴的な相貌乍ら 郷土史研究家役( ↓ 左)が嵌まるが 俳優名不明。
右は主演の怪奇実話作家 小林雅文 役 村木仁(むらきじん) ↑ 新潟県出身(!)。
この際 懸案のプレミアム・エディションDVD(2枚組) ↓ を中古購入し 特典映像視聴。
未公開映像集は色々興味深くも 愛川ゆず季 ら出演の追跡番組設定映像(白石監督本人も登場)等は例により些かお巫山戯過ぎ感否めず(無論そこが好いわけだが)。
なおフェイクドキュメンタリー面に関しては長くなるので割愛 次機を期す。
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